自然葬とは、お墓を用いず遺骨を直接自然に還すことや、お墓の代わりに樹木を用いた墓標を建てることなど、
自然の循環の中に回帰する葬送の方法です。
日本では、従来遺体を海や川に流していたり、遺灰を野山に撒いたりしていました。
現在では、墓地、埋葬法や刑法で規制があり、勝手に自然葬をすることは出来ません。
近年、ライフスタイルの変化などによって、葬送方法は時代とともに変化しています。
その中でも、散骨や樹木葬が注目を集めており、年々その葬送方法を選ばれる方が増えております。
散骨と樹木葬は似ておりますが、違うものです。その二つで異なる点としては、樹木葬は墓地として認められている土地に埋葬しなければならないという点です。
経費的な問題からも、自然葬が望む人が増えています。
少子化社会では、両親と祖父母、合計6人の経費負担が1人の孫に掛かって来ることから、シックスポケットと呼ばれ、夫婦で4人の親を看取る、あるいは単身者が2人の親を看取るという状況になり、葬儀やお墓に掛けられる費用が今まで以上に安価であることが望まれています。
従来の先祖代々から続いて来た墓地制度の崩壊が始まっています。
その理由としては、少子高齢化や未婚化による単身者の増大、都市への人口集中などが要因として挙げられます。
特に、実家と離れて暮らす住民には、自分や親の出身地にある先祖代々の墓地が距離的な負担となることや、寺院による墓地の維持管理費が高いという理由、近隣や寺との付き合いが面倒、等の様々な理由により、従来の墓地制度に疑問を持つ人が少なくありません。
その結果として、自宅に近い墓所の安価な合葬式墓地を選択する人も増加してきています。
先祖代々の墓を守り、その費用を数人の兄弟で分担する、あるいは長男が家や財産を継承すると同時に墓を維持する経費を負担する時代は、今や地方都市でも継続が難しくなって来ています。
単身者や子どものいない夫婦をはじめとして、永代使用を前提とした従来型の墓地は、親族に世話を掛けるなどの理由により抵抗を持つ人が増えています。
集合型の墓地は、使用者にとって将来的な管理の必要性がないことから、子どものいない夫婦や単身者にとっても安心して使用出来るという点から、選ばれることが多くなっています。
「自然に還りたい」との希望をかなえる埋葬方法の普及が進んでいます。
樹木葬を取り入れている町田市にある寺院では、芝生の中にシンボルとして共有の桜の大木を植え、花の下に眠りたいとする希望を実現する桜葬を導入しています。
また、伊豆大島では、自然と共生する墓園をコンセプトとした、大自然に包まれたナチュラルパーク型樹木葬墓園があります。そこでは、ペットの埋葬も可能で、墓園の外観は間伐された雑木林などの里山風景で、伊豆大島の自然を保護する形式になっています。
このように、大きな木の下で眠りたいと希望する人、自然そのものに還りたいとして樹木葬を希望する人が増加しており、東京都や横浜市での公営霊園への導入を契機として、今後全国各地で自然葬を取り入れる自治体の増加が予想されます。
ドイツでは、2001年に自然保護区域内の国有林に、安らぎの森という広大な墓地が出来ました。この墓地に入る人は、生前に好みの木を選定しておき、埋葬の際は、土中で分解しやすい骨壷を根元に埋葬し、幹に故人を特定するプレートを付けるそうです。
古くから土葬文化が浸透しているフランスでも、最近は火葬による集合墓地が増加し、特に個人や夫婦だけの世帯に利用されているそうです。さらに、パリの墓地の中には、散骨の墓地として、思い出の庭という並木に囲まれた芝生の庭があるそうです。思い出の庭は、費用面や管理面でのコストが評価され、利用する人が増加しているとのことです。
中国や韓国において墓地問題は深刻な状況です。中国では、北京、上海などの大都市で、経済開発に伴い墓地用地の不足が目立ち、全国的に開発可能な耕地が限られていることから、墓地利用による耕地の減少に歯止めを掛ける動きも出て来ています。さらには、砂漠化防止など、環境保全のための森林資源確保の必要にも迫られているため、中国政府は、儒教の影響で根強く残る土葬を改め、火葬の普及に力を入れています。
民政省調べでは、火葬率は北京、遼寧、広東省などでは100%に近いのですが、全国レベルでは2005年で53%とまだ半分程度です。それでも火葬率の上昇で、1年間に節約された土地は2,100ヘクタール以上と、抜群の効果が出ています。
さらに、中国の火葬では木棺を使用しないため、木材も200万立方メートル以上節約できたとのことです。現在、瀋陽市では約20万人が散骨され、樹木15万本を植えた樹葬林が新設されています。
韓国でも国土が墓で埋め尽くされると言われるほど,墓地の用地問題が深刻化しています。韓国の保健社会部統計によると、1999年の墓地総面積数は、960平方キロメートルにまで達し、国土面積に対して墓地が占める割合は、韓国全土のおよそ1%が墓地面積です。このため、ソウル市役所では、2001年に福祉健康局老人福祉課葬事文化チームを立ち上げ、墓地不足問題に対する解決策と理想的な墓地のあり方を模索して来ました。
従来の韓国の葬送文化は土葬でしたが、都市開発において、墓地はしばしば開発の妨げとなっていました。
ソウル市では、近年、急激に人口が流入し、生活者が増加したことで、墓地需要が高まっていますが、都市の発展のために墓地の敷地不足が深刻化しています。そのため、土地を必要とする土葬文化そのものを見直し、火葬の推奨をしています。
さらに、葬事文化チームでは、市内における墓地形態を散骨形態に移行させようと計画していて、市が経営する墓地において2003年5月から、散骨を認め推奨しています。
現在、ソウル市が経営する墓地施設4ヵ所に散骨するように管理されています。これらの墓地施設では個人の特別な場所が設けられないことから、個別散骨も容認していく方針で、今後は樹木葬用の施設を開発する計画を進めているとのことです。
ここでは、現在あります自然葬の内容を紹介いたします。
海や山、空や樹木葬など、自然葬は様々な種類があります。
それらの種類を理解することで、葬送の方法が明確になります。
お墓タイプの自然葬として挙げられるのは、樹木葬と土葬があります。
お墓として許可を得ている場所で樹木を墓標にし、土中に遺骨を埋蔵する樹木葬は、自然葬の中でも最も理解が得られやすい葬法といえるでしょう。ただ、注目度の高さに反して、供給が追い付いていないのが現状です。公営としては、都立霊園では小平霊園、市営では横浜のメモリアルグリーンがあるだけで、NPO の「桜葬」他、ほとんどの場合、寺院が運営しています。ただ、樹木葬墓地だけは宗教フリーにしていたり、永代供養としていたりする寺院もあります。
なお、樹木葬と銘打っていても、遺骨を納めるところがカロート式で自然に還らなかったり、墓地全体が庭園風になっているだけで墓地部分は石碑を使っていたりと、様々な形態があります。
樹木葬は自然保護や自然回帰の流れから誕生したのですが、より自由な葬送のあり方を求める人々の関心を集め、樹木葬墓地自体も当初の考え方からアレンジされ、様々な形態が登場しました。 もともとは山林を利用したものが始まりですが、現在は墓地としてきれいに整地され区画が割り振られた場所に植樹する方法もあります。
ここでは大きく2つの種類に分けて説明します。
自然の里山に埋葬する方法です。 山林を保持するという社会貢献をしているものもあります。 伐採され、木々がなくなった山を買い取ったり、手入れのされていない荒廃した里山を整備して樹木葬墓地として植樹したりした土地を利用しています。 その社会貢献や思想などは素晴らしく、自然を満喫できることでしょう。 人間も自然のものであり、死後は土に還るのが自然でいいと考える方にはこの形態をおすすめします。 コンクリートは使わず、墓標もおかず、骨壷にも入れることなく、自然に土に還ることができます。
ただし、難点もあります。
里山型の難点。
寺院や霊園が整地した、緑あふれる公園のようなエリアに埋葬する方法です。
この場合、お骨を埋葬した場所に植樹という形式ではなく、大きなシンボルツリーの周囲を区画割して分譲することが多いようです。 区画はきちんと決められており、1区画に納めることができるお骨の人数が決められています。
場所によっては骨壷のまま納めることもできます。
里山型と違うのは、墓標などにお名前を刻むこともできることです。 人工物を排除して自然に返して山林保全を目的とする里山型と異なり、公園型は小さくてもお墓がほしい方、後継者がいないので自分たちだけが入れるお墓を探している方など、自然に還ることとの両立を考える方が多いのではないでしょうか。 きれいに整備されており、区画もわかりやすく、お参りに困ることはほとんどありません。 また、植えられる樹木も、花が咲くようなものが多いです。
特に人気なのは、桜です。
大きな一本の桜の木の周りにたくさんの方が眠っているというものです。 その他、霊園などでは薔薇の花壇を作ったり、美しい墓地になっているところもあります。
ただ、自然回帰や環境保護の思想などはあまり強く打ち出されていないように思われます。
公園型の難点。
おおむね樹木葬は永代供養墓であることが多いです。 樹木葬を選ぶことで、継承者の心配がなくなるという点が特徴的です。
現在、日本ではおよそ 99%が火葬であり、土葬のできる場所は限られています。法律では禁じられていませんが、衛生的な配慮から、東京都をはじめ多くの県が土葬を禁止する条例を敷いているからです。数少ない土葬可能な場所も、外部から受け入れることはめったにしません。
お墓がないタイプの自然葬には、散骨、遺灰をこめたバルーンを打ち上げる「バルーン宇宙葬®」などがあります。
お墓がないタイプの自然葬の中で、最も普及しているのが散骨です。最近では、各葬儀社が散骨プランを取り入れるようになりました。
散骨は、主に海洋散骨がメジャーです。
(画像は参考です)
散骨を選ばれる方は、あくまでも本人の希望で選ばれています。遺族が良いからといって選ばれることは、ほぼ無いと言っても過言ではありません。
遺体や遺骨の埋葬に関しての法律である『墓地、埋葬等に関する法律』と、刑法190条による『遺骨遺棄罪』の規定があり、墓地以外で遺体や遺骨を埋葬することを禁じていることから、一般的な解釈として、散骨などは行ってはならないとされて来ましたが、1991年に法務省と厚生省から、散骨について今までの概念が覆る見解が出されました。
どちらの見解も、公式な文書としては残っておりませんが、今までの概念を覆す見解であったことは間違いありません。
本見解は、散骨が行われたことに対して、法律を犯したとするかどうかという観点において言及したものです。しかし、この見解により散骨という方法が合法であると認められたわけではありませんが、現行の法律では取り締まることはできないという見解が示された形です。
散骨するにあたっては、ルールやマナーを守る必要があり、注意が必要です。
法務省の見解として「相当の節度を持って」という言葉があります。具体的に「節度」についての記述はありませんが、散骨を行う側には守るべきことがあります。
ご自身で散骨する場合や、業者に委託して散骨する場合などがありますが、ここでは、代表的な業者が守っているルールなどを挙げていきます。
自治体によっては禁止または規制があるところもあります。各自治体で定める条例に従う必要があります。
骨という形状が残ったままで散骨をすると、遺骨遺棄になってしまいます。遺骨はおおよそ1~3㍉以下の大きさに遺骨を砕きます。遺骨は粉末状にする必要があります。
他人の気持ちを害することは絶対に避ける必要があります。
自分の家の敷地内に散骨したことにより、風評被害と見られて民事訴訟に発展し、多額の損害賠償の判決が出た例もあるようです。
海洋散骨の場合は、漁場の付近を避けなくてはなりません。例え、刑法には触れない場合でも、損害賠償や慰謝料などの、民事訴訟になる可能性があります。
海洋散骨する際、故人の好きだった指輪を一緒に撒いてあげたいと言って撒いてしまうと、不法投棄に当たってしまいます。
例えば献花をする場合は、ビニール包装を外してから行うなどの配慮が必要です。
自然に還るものでも、限度を超えてしまうと迷惑になります。食品、お菓子も海上や土壌を汚染してしまいます。常識の範囲内で行う必要があります。
散骨を通してトラブルを避けるためには、法律やマナーを十分理解しておかなくてはなりません。
どこがいい、悪いなど、はっきりと決められているわけではありませんが、散骨をする場合、「節度」をもって散骨できる場所はどこなのか、挙げてみます。
現在は、船をチャーターして、海岸から十分離れた沖合の海に散骨するか、私有地の山林などを散骨の場としているのがほとんどのようです。
散骨業者のほとんどは、海洋散骨です。 海洋散骨のやり方は大きく分けて3タイプあります。
自身の私有地だとしても、遺骨を「埋葬」することはできません。
あくまで散骨です。 遺骨を撒いて土や枯葉をかぶせるというのは、散骨でなく埋葬であるとされる可能性があります。
自宅の庭先に散骨することも基本的にはできません。自宅の庭にお墓を建てることは法律で禁じられています。また、自宅の庭に散骨することでご近所との摩擦が起こり、精神的苦痛による慰謝料や、土地家屋の資産価値低下による損害賠償などに発展する可能性もあります。
現在、海洋散骨を実施できる場所は、少しずつ増えています。
一般的な散骨の方法としては、船をチャーターし、海水浴場から離れるのはもちろんのこと、漁業者にも邪魔にならないところで行います。
船を個別にチャーターして、家族や親族だけて行う個人散骨や、 少人数で他の遺族の方と合同で行う合同散骨、業社が代理で散骨を行う代行散骨があります。
個人散骨や合同散骨は、天候により実施が左右されるという場合があります。
天候の都合で、延期に場合もあるため、スケジュールは余裕を持って抑えておく必要があります。
地域によって船のチャーター料金の相場がだいぶ違うので一概には言えませんが、個人散骨の場合は 20 万円~30 万円、合同散骨は 10 万円~15 万円程度でプランを組んでいるところが多いです。遺族の立ち会いがない散骨はさらに安価で、人気も高まっています。
散骨は自然葬の中で唯一、遺族が自力で行える葬法です。自分で船を持っていればもちろんですが、持っていない場合も、事情を話して快諾してくれるような船会社を選んでチャーターし、遺族の手で遺灰を海へ還すことができるからです。
栃木県宇都宮市の「バルーン宇宙葬の会」が手掛けるのが、バルーン宇宙葬®です。直径2.5メートルを超える大きなバルーンに遺灰を込め、高度 30 キロ~40 キロの成層圏へ向けて打ち上げます。成層圏付近になると、気圧の関係で3~4倍に膨張して破裂し、一瞬のうちに放出されるのです。
ロケットや人工衛星に数グラムの遺灰をメモリアルグッズとして載せる、自然葬の中では最もロマンチックな葬法です。厳密に言えば自然に還るわけではありません。
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